Netscape社の起業から30年
1994年4月4日、 当初はMosaic CommunicationsのちのNetscape Communications社が起業しました。 早いもので、あれから30年です。 もちろん、 我々がネットスケープの名前を知るのはMosaicの後釜として1994年末のネットスケープ・ナビゲーター(Netscape Navigator)登場以降だったと思います(うろ覚え)。
抽象化レベルをあげた戦場を設定すれば天下が取れる
これは「抽象化レベルをあげた戦場を設定すれば天下が取れる」というブラウザの戦略に気づいた人が偉い。 もっとも、 ハードウエアの凸凹を埋めるためにOSが登場したのだから、 次はOSの凸凹を埋めれば…というのは自然な発想ですけど、 実際にそれを作るのは大変なので、やっぱりすごいよね。
戦略レベルでは正しいし、(戦術レベル=)短期決戦で決着がつけば良かったのですが、 長期戦になると補給(資金力、会社の体力)で負けちゃいますね。 じっさい負けたわけです。
当初、この作戦は、うまくいっていた印象ですが、 OSベンダーがマヌケでないと長続きしません。 「短期決戦で圧倒的シェアがとれなかった」というよりも、 OSベンダーが(自社製)ブラウザをプレインストールしてきたら勝負にならない… 人間心理として「あえてデフォルト値を変更したくない」ことを利用されているわけです。
これが第一次ブラウザ戦争。
「オープンソース」という用語を作ろう(1998/02)
3年もすると勝敗は明かになってきました。 いまさら起死回生は無理だと思っていたと思うのですが、 ネットスケープの最後のアガキは、やがてオープンソース運動へと進化していきました。
このへんの詳細は、 めずらしく当事者の"ほぼ"リアルタイムの証言が読める オライリーの「オープンソースソフトウェア」を参照してください。 すでに日本語訳は絶版ですが、Web版は公開されつづけています。 読みにくいけど;-) なんでPDF版を出してくれないんですかね;_;
[番外編1] IIJとネットスケープが協業できていたら?
IIJ、今年(2024年春)の新入社員が307人というの見て、 (いちおう弱小でも株主だから)「え?そんなにとって大丈夫なの?」と思った春なのでした。
でも、30年前は、つぶれる寸前でした。 ようやく本業を始めることが出来るようになったのが1994春なのです。
ところで、 われらが鈴木社長(の回想録)いわく、 この頃、 ネットスケープから「提携しないか?」という話があったそうですが、 まだ本業がヨチヨチあるきの今、そこまでの余裕は無いということで、 残念ながら断ったのだそうです。
「15ヶ月ほど監督省庁にイヤガラセをされ」ていなければ、 我々は、 専用線と一緒にネットスケープも売ってあるいていたかもしれず、 日本の商用インターネットの展開が違ったかもしれません(?) (とチョッピリ思いますが、たぶん変わらなかったろうなぁ;-)。
[番外編2] Gmail誕生からも20年
2004年4月1日にはGmailがベータリリースされました。 ネットスケープの10年後がGmailだったんですね、時の流れは速いです(遠い目)。
参考文献
- Chris DiBona, Sam Ockman and Mark Stone, “Open Sources: Voices from the Open Source Revolution”, (Oreilly, 1999); 邦訳: クリス・ディボナ(著), サム・オックマン(著), マーク・ストーン(著), 倉骨彰(訳) “オープンソースソフトウェア - 彼らはいかにしてビジネススタンダードになったのか” (オライリー・ジャパン, 1999)
- 鈴木幸一, “日本インターネット書紀 この国のインターネットは、解体寸前のビルに間借りした小さな会社からはじまった” (講談社, 2015)
- Google Testing Free Webmail (2004-04-01)
- サービス開始から10年を迎えたGmailの開発秘話や現在、そして今後の課題など
- Gmail、4月1日で20歳に
- 「Gmail」が誕生から20周年! 当時の姿、覚えていますか?